設立趣旨

 日本における会計学の学術研究を目的とする学会には、日本会計研究学会をはじめとして多くの会計学の研究分野別学会が存在し、会計学に関する学術研究の成果を発表・蓄積・発信して社会の発展に多くの貢献をしている。しかし、会計学の学術的研究を踏まえた会計教育に関する専門的研究を目的とする学会は存在しない。

 日本において会計教育に関する研究発表・討論の「場」が最初に設けられたのは、札幌学院大学で開催された日本会計研究学会第51回全国大会である。この全国大会では、アメリカ会計学会会長のガーリー・L・サンデム教授を迎えて、「会計教育に関する公開シンポジウム」(日本会計研究学会と札幌学院大学会計学研究所共催)を開催し、多くの参加者により真剣な議論が盛大に行われた。その後これを契機に、日本会計研究学会のスタディーグループ「21世紀へ向けての会計教育についての研究」(主査:藤田幸男)および「21世紀の大学像と会計教育の研究」(主査:藤永弘)による大学・短期大学の会計教育の実態調査を踏まえた会計教育のあり方に関する研究が行われた。

 会計教育における特定分野の研究としては、日本簿記学会が学会設立以来「簿記教育研究部会」を設け簿記教育のあり方に関する研究を行っている。現在、会計教育に対する関心の高まりを反映して会計教育に関する研究報告、事例報告や実態調査報告などが多く発表されている。最近では「シリーズ会計教育の課題」(責任編集:柴健次)『企業会計』(中央経済社)において、10回にわたって会計教育方法の確立に向けた研究報告と議論が行われ、さらに多くの会計教育者の関心を高めている。

 また、会計は「あらゆる経済組織」における経済活動の「将来の姿」、「現在の姿」、「過去の姿」を貨幣数値で「写像」することから経済言語、マネジメント言語、ビジネス言語、コミュニケーション言語等として社会科学の中核的役割を果たしてきている。したがって、会計教育においては、経済教育、経営教育、ビジネス教育、法学教育等との統合・融合教育が求められている。会計教育を含めた統合教育・融合教育については、「全国四系列教育会議」において経営学教育、会計学教育、商学教育、経営情報学教育の統合・融合教育に向けての教育研究が既に25年にわたり行われている。

 現在、経済活動のグローバル化時代の中で、会計は「世界共通言語」として世界経済、国家経済の健全な発展に貢献するために会計基準の「国際的コンバージェンス」に向けて、国際財務報告基準(IFRS)を軸に、国際会計基準審議会(IASB)の活動が活発化している。わが国においても上場企業等を中心にIFRSのアドプションに向けての取り組みが行われている。今後の会計教育の場においてもIFRS教育が重要な教育課題となっている。

 このような会計教育環境の変化の中で、高等教育における会計教育を専門的に研究・開発・議論し、発信する「場」としての「日本会計教育学会」の設立に対する要望と期待が、会計教育の研究者、会計教育現場の担当者および一般社会から多く寄せられてきた。

 これらの強い要望と期待に応えると共に、高等教育、社会教育・生涯教育・継続教育における会計教育の「内容」と「質」の向上を目指し、会計教育課程および教育方法の開発・改善・充実を図り社会の発展に寄与することを目的として、会計教育の研究・開発・議論・提言・発信の「場」として「日本会計教育学会」を設立するものである。

 当日本会計教育学会は、会計教育の研究活動の充実・発展を図るため、「東日本部会」および「西日本部会」の二つの部会を設け、両地域からの会計教育発信を基礎に、全国的な会計教育発信を国内および世界に行うこと等を目指すものである。

2009年2月10日

発起人氏名:順不同

藤永 弘(青森公立大学) 柴 健次(関西大学) 橋本 尚(青山学院大学)
八田進二(青山学院大学) 坂下紀彦(札幌学院大学) 長井敏行(北海道情報大学)
佐藤信彦(明治大学) 藤田晶子(明治学院大学) 堀江正之(日本大学)
杉本徳栄(関西学院大学) 松本敏史(同志社大学) 工藤栄一郎(熊本学園大学)
福浦幾巳(西南学院大学) 向 伊知郎(愛知学院大学) 岡崎一浩(愛知工業大学)
小俣光文(東京経済大学) 菅原 智(広島修道大学) 石坂信一郎(専修大学北海道短期大学)